賞与(ボーナス)と支給日在籍者要件

このたび自己都合で会社を退職することになったのですが、会社の人事担当者によると、賞与(ボーナス)はある一定の支給日に在籍していなければ支給されないことになっていると言われました。


私は、賞与の査定期間の途中まで働く予定なので、その分は一部払ってほしいという気持ちがあるのですが、このような取り扱いは許されるのでしょうか。

 

 

 

会社の就業規則等に明確な支給日在籍要件が規定されている場合には、支給日在籍者のみ賞与を支給するという取扱いも許される可能性が高い。

 



 

 

賞与の法的性質


賞与(ボーナス)も、労働協約や就業規則、労働契約等に定められ、その定めによって支払われる場合には、労働基準法上の賃金に当たるとされています。

 

賞与には、(その会社における位置づけや法的性格にもよりますが、)労働者の賃金の後払い的性質があるとすると、賞与支給日前に退職した労働者に対しても、その勤務実績等に応じた金額については支給されるべきと考えることもできそうです。


例えば、質問者が年俸制の報酬を毎月14分の1ずつ受け取っていて、毎年2回は賞与という名目で受け取っているという場合であれば、その賞与は賃金そのものといえそうですので、一定額を請求する余地が考えられます。



 

就業規則等を確認してみましょう。

 

もっとも、一般的に賞与は、毎月一定の期日に定例の給与として支払われるものとは異なり、法律上の規定に基づくものではなく、会社の賞与に関する制度によって受給することが認められているものです。

 

また、賞与には、賃金の後払い的性質だけでなく、(各会社にもよりますが、)将来の勤務への期待・奨励(インセンティブ)という性質を合わせもっているものも多いでしょう。

 

ですので、賞与に関しては、不合理な差別となるものでない限り、会社がその支給条件を制度として定めることが許されています。

 

支給日に在籍していなければ賞与 が支給されないという要件(支給日在籍要件)についても、就業規則等に明確に規定されている限り、有効と考えられています(最高裁第一小法廷・昭和57年10月7日判決 〔労判399号11頁〕等)。

 

 

したがって、人事担当者の言うことが正しいのか、いちど会社の就業規則等をみて、そのような支給日在籍要件が明確に規定されているのか確かめて下さい。

 

確認したうえで、もしそのような規定があった場合には、支給日前に退職したことによって賞与が支払われなかったとしても、違法とまでいうことは難しいでしょう。反対に、そのような規定がない場合には、一定程度の賞与を支払うよう主張する余地もあるでしょう。

 

 

 

特別な事情などがある場合


ちなみに、以上の議論は自己都合退職の場合を主に想定していますが、特別な事情などがある場合には、法的に争う余地は考えられないではありません。


 

実は、賞与の支給日在籍要件に関して、会社の都合による整理解雇のような場合にも適用を認めていいのかについては、学説上も反対説が少なくありません。


ですので、例えば、会社が賞与の支給日前の日を意図的に設定して整理解雇を実施したような場合には、争う余地が考えられるでしょう。


 

また、過去の判例をみると、賞与の支給日が例年よりも大幅に遅れているような事情がある場合には、支給日在籍要件が適用されないとしている判決(最高裁第三小法廷昭和60年3月12日判決〔労経速1226号25頁〕)もあるようです。

 

このように特別な事情がある方は、賞与の請求が認められる可能性があるかもしれませんので、一度、弁護士に相談されるとよろしいでしょう。

 


 

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